『大規模改修工事』の進め方がよくわかる!流れがわかれば、失敗しない!

マンションやビルの『大規模改修工事』は、一般的に平均15年ごとのサイクルで行う大掛かりな外部メンテナンス工事になります。

マンションの管理組合様やオーナー様にとっては、非常に重い負担になりますが、建物の劣化は待ってはくれません。経年により様々な形で劣化が表面化してくれば、まずは『大規模改修工事』の計画、検討をはじめることが望ましいと思います。目をそらして「まだまだ大丈夫!」と先送りしていると、建物の価値や寿命が損なわれ、その先には多額の修繕費用が・・・とならないようにしたいものです。

建物は、適切なタイミングと適切な方法で手当てをすれば経済的で効果的な維持保全につながります。とくに外壁などの塗装工事は、建物の外側を保護して、寿命を延ばす効果があるだけでなく、美観回復による資産価値の維持向上、イメージアップも期待できます。

とは言え、建物の大きさにもよりますが、長い期間と決して安くはない費用がかかる工事ですから、何からはじめたらよいのか、わからないことばかりなのではないでしょうか?

「大規模改修工事は、何からはじめればいいの?」
「なるべく安く費用を抑えるには?」
「管理会社、建設会社に任せておけば大丈夫?」
「設計とか、コンサルタントとか、本当に必要ですか?」

このようなお悩みや不安をお持ちの方のために、ムダを省いた経済的で適切な失敗しない『大規模改修工事』の進め方について、ご説明いたします。

1.修繕委員会(専門委員会)の結成?

分譲マンションの場合ですが、理事会とは別に修繕委員会(専門委員会)を結成して、『大規模改修工事』を進めるための専門のチームを結成することが多いです。工事内容の検討、業者の選定、工事中の業者との打合せなど、重い責任と多くの役目を管理組合の代表として行うのが仕事になります。

これは、管理会社による進め方や管理組合様の規定や方針によって、いろんな形がありますので、特に正解の形はないように思います。理事会がその役目も担うことも少なくありません。

でも、ちょっとお待ちください。

そんなに大変で責任の重い修繕委員会は本当に必要でしょうか?理事会であれば、すでに権限も責任もありますし、もしも工事による負担を軽くできる方法があれば、無理して結成しなくても良いかもしれません。

<Point>
修繕委員会は、メンバーが集まらないことが多く、また工事を進めていく過程でいろいろと揉めることも少なくありません。何よりも精神的、時間的な負担の大きさから、結局は管理会社へお任せになったり、設計コンサルタントの起用を考えられることが多いと思います。しかし、実はこれが、費用が増え、品質が下がり、失敗することになるポイントかもしれません・・・

2.『大規模改修工事』の進め方の選択?

大規模改修工事の進め方には、3つのパターンがあると言われています。

□ 管理会社主導方式(管理会社お任せ方式)

□ 設計監理方式(コンサルタントお任せ方式)

□ 責任施工監理方式(施工会社お任せ方式)

一長一短があると思われる3つのパターンについて、それぞれのメリットとデメリットを簡単に説明いたします。

管理会社主導方式(管理会社お任せ方式)

メリット>
✅ 管理組合にとって負担が一番少なく、理事会及び修繕委員会にとって責任が一番軽い。(一番楽である)
✅ 工事の責任の所在がハッキリしていて、工事後のアフターや保証も安心できる。(すべて管理会社)

<デメリット>
✅ 費用が一番高くなる。(管理会社の費用も含まれる!)
✅ 施工会社は管理会社が決めるため、技術力、監理力に不安がある。(馴れ合い体制が多い)

設計監理方式(コンサルタントお任せ方式)

<メリット
✅ 第3者の立場で工事の設計、監理ができ、専門的なアドバイスが得られる。(一番安心できる)
✅ 施工会社の手抜き工事を少なくできる。(コンサルタントがチェック)

<デメリット
✅ 高額なコンサルタント料がかかる。(費用は、管理会社お任せ方式 > コンサルタントお任せ方式 > 施工会社お任せ方式)
✅ 工事の責任の所在がハッキリしないため、工事後のアフターや保証も一番心配である。(コンサルタントは責任をとらない)

責任施工監理方式(施工会社お任せ方式)

<メリット>

✅ 費用が一番安くなる。(中間の余計な費用がない)
✅ 工事の責任の所在がハッキリしている。(すべて施工会社)

<デメリット>
✅ 施工会社を管理組合で決めることができるが、管理組合だけで選ぶのは難しい。
✅ 手抜き工事をされるとチェックが難しい。

弊社はもちろん施工会社なので、余計な費用がかからない『責任施工監理方式』が一番良いと考えてますが、どの方式でも施工会社として選んで頂けるように、まじめに工事を行っております。

ここでは、このあとの流れを、『責任施工監理方式』で進めていきます。(発注者は、例として管理組合様としてますが、ビルオーナー様などの場合の流れもほぼ同じと考えてください。)

<Point>
建設業界は、談合などのイメージから繋がり(癒着)が強い業界と言わざるを得ないと思います。どんなに公明正大に話し合いを重ねても、まったく繋がりのないところから、良いコンサルタントや良い施工会社を探して選ぶのは、残念ながら非常に難しいと思います。しかしながら、居住者の縁故関係や繋がりの会社を紹介することは、できるだけ避けていただきたいです。これは一番おすすめできません。もしも工事の中で何か問題があったときは、お互いに大変です。ましてやリベートや紹介料などが発覚すると、その方はもうそのマンションには住めなくなります。(少なからずあることも事実です。)
オススメする『責任施工監理方式』でも、施工会社選定の際は、数社の合見積もりを比べて、しっかりと検討する方法や管理会社や知り合いからも複数の施工会社を紹介してもらったり、様々な方法を考えないといけません。

3.『大規模改修工事』の構想

『大規模改修工事』をしないといけないことは薄々感じてきても、何からはじめれば良いかわからないと思います。まずは、ぼんやりとした構想でぜんぜん大丈夫です!

「いつごろ工事を実施するのか?」
「どのくらいの予算で計画するのか?」
「どんな材料で、どんな工法で、どの部分の工事を行うのか?」

『責任施工監理方式』は、コンサルタントの仕事も施工会社がしっかりと行いますので、まずは一つひとつしっかりとサポート、アドバイスをしながら、大まかな構想を一緒に考えていきます。

「原状回復の修繕工事なのか?」
「付加価値をつけた改修工事なのか?」

工事名称も『大規模修繕工事』なのか、『大規模改修工事』なのか、少し意味が異なりますので、構想の内容によって決めて良いと思います。

大まかな構想が概ねまとまりましたら、設計図、仕様書、そして予算書などを作成する基本計画に移ります。
しかし基本計計画をする上で、調べておかないといけないことがもうひとつあります。それが、現状の建物の劣化状態になります。

4.建物の劣化調査・診断

建物は経年によって劣化が進行します。基本計画を行う上で、既存の建物がどの程度の劣化状態であるか、できるだけ詳しく把握する必要があります。(※劣化の種類や補修方法は、後述する予定です。)

『設計監理方式』の場合は、この段階で全面打診などの劣化調査を行い、補修箇所の数量なども細かく調査した上で、基本計画や予算書の作成を行うこともあります。しかし足場組立(工事)前の全面打診などの劣化調査は、別途長い時間と多額の費用が発生するため、本当にする必要があるのか、十分な検討を行う必要があります。(足場組立後は、必ず全面打診調査を行いますので、補修の漏れはありません。)

そこで、オススメの劣化調査・診断は、(『責任施工監理方式』の場合、)通常は無償で行われる簡易的な劣化調査を行い、劣化状態、劣化数量などを推定する方法です。

簡易的な劣化調査と言っても、建物の外部からの目視や手の届く範囲での打診調査、また一部バルコニーなどの立入調査などを時間をかけて行い、必要に応じて、塗膜付着力引張試験、コンクリート圧縮強度測定、中性化深さ測定などのコンクリート物性診断なども行うことにより、十分に劣化状態を判断できる内容であることが必要です。

劣化調査・診断の結果は、劣化状態の評価、劣化箇所の写真(全面打診調査を行った場合は図面、数量も含む)による報告書の提出はもちろん、必要に応じてプロジェクター等を使って、わかりやすく説明会を行うこともあります。

<Point>
劣化調査を行う技術者の力量が必要になります。建物のコンクリートなどの劣化、塗装の劣化、防水の劣化など、建物外部の状況をしっかりと見極めて診断できるスキルがどれだけあるかによって、この後の計画の適正を左右しかねません。

5.基本計画(設計図・仕様書・予算書など)

適切な劣化調査・診断を行った上で、管理組合様の構想、要望をしっかりとフォローした形で、基本計画を行います。主な基本計画の資料は、設計図、仕様書、予算書(見積書)になります。必要に応じて、材料比較表、カタログ、工程表なども作成、提出してもらいましょう。

どうしても基本計画(基本設計)の検討には、少し時間がかかります。
設計図、仕様書と照らし合わせながら、予算書(見積書)の内容を一つひとつ確認し、検討していきます。予算に合わせて経済的で効果的な工事内容をご納得頂くまで一緒に考えていきます。(施工会社が作成するのも時間がかかりますので、ご了承ください。)

基本計画の作成は、まさにコンサルタントの仕事です。コンサルタント料は、通常は工事金額の5%~15%程度と言われております。『責任施工監理方式』の場合、そのコンサルタント料を大幅にカットできます。施工会社の工事金額には含まれているから、カットできないのでは?と思われる方もおられるかもしれません。

大規模改修工事の場合、施工会社は、コンサルタントがいても、いなくても、実は基本計画のための作業量はそんなに変わりません。(新築工事の設計やコンサルタントとは明らかに異なります)よって、コンサルタント料などの余分な費用はカットできます。適正で純粋な工事金額にて検討することをオススメいたします。

もし管理組合にて、施工会社の予算が本当に正しいのか、妥当なのか、心配であれば、もちろん調べることもできます。予算書をもとに、2~3社の相見積もりを依頼して、比較検討することも良いかと思います。少し難しいですが、同じ内容で相見積もりを比べることができれば、少しわかりやすいと思います。

<Point>
基本計画などのコンサルタントも含めて設計、監理、施工を行う『責任施工監理方式』ですので、ここの調整、舵取りがもっともむずかしいかもしれません。よって、はじめに選ぶ施工会社が、いかに信頼、信用できる施工会社であるかが、とても大切になります。

6.実施決議

それぞれの管理組合様によって、管理規約などが異なるため、決議の方法は異なると思いますが、基本計画や工事金額が決まりましたら、工事の実施における実施決議を行う必要があります。

修繕委員会(専門委員会)もしくは理事会の皆様には、とても大変で荷の重いことですが、一般的には工事の内容の説明などを施工会社にて行い、協力しながら皆様に承認を頂くことになります。

ここでは大まかな工事内容の説明を行い、工事の進め方や入居者の皆様への注意事項やお願い事項などは、しっかりと実施計画ができた後に、工事説明会などで説明するようにした方が良いと思われます。

しかしながら、施工会社としては、ある程度の実施計画を検討、作成しておかないと、質問に何も答えられないようでは、本当に大丈夫?と心配されないようにしないといけません。

<Point>
実施決議の際は、一般的に総会を行いますので、管理会社へサポートしてもらう必要があります。コンサルタントを任せてもらえなかったからと協力しないという管理会社もあるようですが、「大規模改修工事」の成功には、管理組合、管理会社、施工会社、それぞれ相互の協力関係がとても大切になります。ここに至るまでのお打合せの中で、しっかりと良好な関係を築く必要があり、そもそも目的は「建物の適切なメンテナンス」であることを、ここで再確認しておくことも必要かもしれません。

7.契約締結

実施決議で承認をもらえましたら、すみやかに発注者である管理組合様と請負者である施工会社の間で、工事請負契約を締結します。工事請負契約書には、工程表、見積書、約款などを添付します。

大規模改修工事を行う際は、必ず「工事請負契約」を交わすことがとても大切になります。後々の不要なトラブルを避けるためにも必要です。もちろんクーリングオフなどもしっかりと確認した方が良いです。

8.実施計画・事前準備(色決め・仮設計画など)

工事請負契約を締結した後、すぐには工事ははじまりません。いろいろとまだ決めないといけないことや、工事をする上での手続きなどがあります。

カラーシミュレーションによる色決め

その一つは、塗装をする部分のすべての色を決める「色決め」です。

いろいろとご要望があると思いますので、色決めもしっかりと時間をかけて検討する必要があります。決め方はいろいろありますが、外壁カラーシミュレーションを作成、掲示して、投票によって決めることが多いと思います。

外壁カラーシミュレーションとは、建物の写真や図面に色をつけて、事前に塗装後の完成イメージを作成し、外壁塗装の色決めにとても役に立つツールです。

少し時間がかかりますが、大まかなイメージがわき、実際に塗装する色の「塗り板」での確認を併用することで、ご納得いただける色を決めて頂けると思います。

詳しい内容は、外壁カラーシミュレーションのページをご確認ください。
※ 外壁カラーシミュレーション!後悔しない色決め

仮設計画

色決めの他にも事前の準備があります。
建物が大きい場合、工期が長い場合は、足場設置の届け出が必要になります。図面や計算書を作成するのに、1週間~2週間は必要です。
 ※ 建設工事計画届のポイント(難しいです。参考までに)
また敷地が狭く、道路に足場を設置しないといけない場合は道路占用許可、設置はしないが道路にトラックなどを駐車しないといけない場合は、道路使用許可が必要になります。
 ※ 道路使用許可申請手続き(福岡県)(参考までに)
 ※ 道路占用許可申請手続き(福岡市)(参考までに)
これらの届け出は、すべて費用がかかりますので、基本計画の段階で確認して、必要な費用を予算書(見積書)へ記載してあるはずですので、特に追加の費用は発生しないと思われます。

近隣の方へのご挨拶

それと手続きではありませんが、絶対に欠かせないのが、工事前の近隣の方へのご挨拶です。通常は、約1~2週間前に直接隣接している近隣の方へご挨拶に伺いますが、管理組合様のご要望により、直接隣接していなくても必要と思われる方へご挨拶に伺うこともあります。

大規模改修工事の場合、足場組立、高圧洗浄、躯体補修工事など、ご近隣の方にとって騒音になる作業があります。また塗料のにおいなどが気になる方もおられます。事前にご挨拶に伺うことで、不要なトラブルになることを避けることができます。

<Point>
「大規模改修工事」も含めて建築工事は、必ず何らかのご迷惑を近隣の皆さんへ与えていると言う意識を持たないといけないです。 大切なのは、「事前のお知らせ」「事前の手続き」そして、「こまめなコミュニケーションと配慮」です。しかしそれは、当たり前のことを当たり前にすることです。

9.工事説明

もっとも大切な事前の準備の一つとして、ご入居者の方への工事の説明を事前にしっかりと行う必要があります。

まずは、工事着工の案内と、工事中に注意して頂きたい点、お願い事項をまとめた工事説明資料をすべてのご入居者へ配布致します。

そして、必要に応じて、プロジェクター等を使って、わかりやすく工事説明会などを行います。

<Point>
安全面、品質面はもちろん、ご入居者の日常生活のリズムにできる限り影響を及ぼさないように計画することがとても大切です。工事能力だけでなく、目配り、気配り、心配りができる施工会社、施工管理が望ましいです。

10.工事(施工)

安全管理、品質管理、工程管理を徹底して施工します。
また、工事中は、タイムリーな案内チラシの配布や掲示に努め、工事用ポストの設置や現場担当へのホットラインなど、入居者様、ご近隣の皆さまに十分に配慮した大規模改修工事を実施します。

(※大規模改修工事の工事内容、工程、施工方法などは、後述する予定です。)

<Point>
よく現場管理は、「段取り八分」と言われます。 段取りが悪いと、工期が長くなったり、余分なコストがかかったり、施工不良と言う最悪な結果にもなりかねません。 しっかりと事前に計画を練って、時間的にも気持ち的にも”ゆとり”がないと、すべての人に満足してもらえる仕事はできません。

11.完了検査・引き渡し

しっかりと施工した証として、しっかりと竣工検査を行い、工事後は工事写真、劣化調査図、劣化集計表、工事保証書などをまとめた竣工図書をすみやかみ速やかに提出します。

12.アフターサービス

工事保証は、メーカーと施工会社との連名で提出します。工事の保証期間や定期点検の時期などは事前にしっかりと協議して行います。

13.まとめ

マンションの大規模改修工事は、住民の皆さんが普段通りに生活されているところに作業員が立ち入り工事を行います。よって、新築工事とは異なる知識と工事能力が必要になり、それぞれのマンションによる様々な劣化状況、立地条件に対応できる豊富な経験がなければ、満足していただける工事はできません。
(弊社は、安心感のある大規模改修工事を実現します!)

<Point>
こんなに大変な工事ですが、避けては通れません。しかし、あまり背負い過ぎずこの工事を楽しむことができれば、自ずと成功が見えてきます!

最後まで読んでいただきまして、本当にありがとうございます。「大規模改修工事」で悩まれている方にとって、少しでもお役に立てることがありましたら、とてもうれしいです。

いろいろとご説明いたしましたが、どんな工事も結局最後は、人対人の信頼関係になってしまうのかもしれません。どんな大きな会社でも、どんな小さな会社でも、実際に工事を管理する人の能力、性格、人柄次第かもしれません。まずは気軽にお問い合わせください。